ワイヤー放電加工について
ワイヤー放電加工とは直径0.03~0.4mmのワイヤーに電気を流して金属を加工する加工方法です。
ワイヤーの材料には主に真鍮・タングステンが使用されており、弊社では真鍮ワイヤーを使用しています。
ワイヤー放電加工機は水もしくは油を使用して加工を行っており、油のワイヤー放電加工機はメンテナンス・加工速度・価格の差が出てしまう為、水のワイヤー放電加工機を保有する企業が多いです。
材質について
ワイヤーカットは放電加工ですので、通電さえすれば、材質の硬度・靭性・延性に関わりなく、どんなもの でも加工可能です。
【加工できる】
✓ ダイス鋼・ハイス・超硬などの難削材・超難削材
✓ チタン・ニッケル・モリブデン・ベリリウム・タングステン・タンタル・ニオブなどの特殊金属
✓ インコネル・ハステロイなどの耐熱合金・超耐熱合金など各種特殊合金
✓ 焼結ダイヤ・マグネット類・グラファイトなど
【加工できない】
電気が通らない材料は全く加工できません。
(非導電性の)プラスチック類 (非導電性の)セラミックスや岩石
金属でも、導電性のない表面処理が施されたものは加工できません。アルマイト・ホーロー・フッ素加工など
この場合、表面の一部を削って通電すれば加工できることもあります。
金属でも、焼入れで表面が異常に変質したものや、いわゆる黒皮が厚いものなどは、表面を削らないと加工できないことがあります。
放電加工には加工液が不可欠です。加工液として水を利用しているため、水に濡らせないものは加工できません。
溶接跡などで「す」の入った部分や、材料中に不純物が多い場合、結晶の粒子が非常に不ぞろいな場合など、放電が安定せず、事実上加工不能な場合があります。
精度について
ワイヤーカットによる精密加工は、粗加工で100分の数ミリの精度を持っています。 より高い精度を求める場合は、仕上げ加工を行います。この場合には1000分の数ミリの精度が実現でき、研磨や治具研削に迫る精度が得られます。
✓ 材料に焼きを入れてから加工できるので、焼きひずみによる寸法誤差やピッチ誤差の心配がほとんどありません。
✓ ワイヤーカット加工の特性として、板厚が大きくなるほど平面性(真直性)が落ち、寸法精度も下がってしまいます。目安としては、板厚が5~40mm前後の場合に、最も高い寸法精度が得られます。
✓ 精度を落として、その分高速に加工することはできません。精度を必要としない加工にワイヤーカットを使うと、通常の機械加工に比べ加工費が割高になります
変形について
ワイヤーカットの場合、加工自体の熱や力が原因で起きる変形はほとんどありません。
✓ 最も問題になるのは、ワイヤーで切ることによって、材料自体の持っている残留応力が開放されておこる歪みです。
✓ ワイヤー加工時の工夫によって、ある程度までは対処できます。
✓ 残留応力が大きい場合には、材料自体が割れたり、ミリ単位で変形が生じたりします。こうなると、ワイヤーカットの段階では対処できません。
✓ 焼入材の場合には、残留応力を減らすために、適切な焼き戻しが必須です。
✓ ワイヤーで切りとる部分が大きい場合には、(焼き入れ前に)捨て切りをして、応力を逃がしてやるのが効果的です。
✓ 穴加工の場合、穴に対してふちの部分が細すぎると、歪が避けられない場合があります。
✓ 金型の場合にも、切刃形状に対してプレート自体のさん幅が小さいと、プレート全体に歪が出る場合があります。
✓ ワイヤーカット加工自体が原因で起きる歪は、微細加工の場合に限られます。この場合は、加工回数や加工条件を検討することによって解決できることがほとんどです
ワイヤー径について
電極がコンマ数ミリと細い上に、機械的な力をほとんどかけずに加工できるワイヤーカットは、まさに微細加工向きです。
✓ 弊社で常時用意のあるワイヤー径は、Φ0.1/Φ0.2/Φ0.3(mm)の3種類です。
✓ 弊社の場合、最小加工溝幅は約 0.15mm、最小加工Rは約 0.07mmです。
✓ ワイヤー径が細いほど加工溝幅や加工Rは小さくできますが、加工速度が落ちるため、加工費は高めになります